Executive Interview ADKグループ各社 社長インタビュー

NO.02

プロフェッショナル採用の社員は
“新しいビジネスパートナー”。
“なにか面白くなりそうだな”と
ワクワクさせてほしい。

森永賢治
森永賢治
Name.
森永賢治
Position.
ADKクリエイティブ・ワン 
代表取締役社長

1992年ADK入社。戦略プランナーとして、主に金融、通信&IT関連企業のブランディングおよびコミュニケーション開発に携わる。2018年マーケティング、クリエイティブ、プロモーションを統括する事業統括・執行役員に就任。2019年より現職。

「専門性」「可動域」という
2つの武器をチカラに>>>>>>>

分社化から2年経ちましたが、
どのような変化が
ありましたか。

森永賢治

分社化の影響がポジティブに出ています。分社化前はADKというひとつのユニットで動いていたので、業務提携をするにも、役員会での審議などハードルがありました。しかし今はある程度、権限が移譲されているので、クリエイティブ・ワンの中で完結できることが増え、スピード感を持って動きやすくなりました。おかげでクリエイティブとアクティベーションに特化するために、様々な協力会社やデジタルに特化した会社と手を組み、専門性を高めることができました。そして獲得した専門性を足がかりに、対応できる可動域も広げてきました。弊社の「総合プロデュース力」は格段に上がったと思います。全体を見る力を得たことで、変化していく市場環境の中でもあまり迷うことなく進めたのではないでしょうか。

コロナに対してもそうでした。リアルイベントができなくなってしまいましたが、その分、今までリアルだったものをオンライン化していくハイブリッド化施策を進めました。その際に必要な技術、例えばVRなどを得意としている企業と手を組み、オリジナルパッケージなどを制作。コロナ禍でも弊社の利益が維持されたのは、早い段階でハイブリッドに移行したおかげかと思います。

また、社内体制の改革も進めてきました。クリエイティブ面で大きく変わったのは、ブティックとモールを作ったことです。まずは、6人~8人の個性的な精鋭が集まる社外ブティックを3つ立ち上げました。さらに音楽に特化した「AWR」、デジタルガジェットを中心に回していく「addict」という社内ブティックも作りました。社外ブティックは自分の会社であるという意識が高いモチベーションへとつながり、結果、大きな成果を生み出しました。社内ブティックは、コンセプトの明確さがその分野の知見を高め、川上の事業戦略から携われるようになってきています。まさにコンサルティング・ソリューションです。

モール構想は、これまでのADKでよく見られた“田中ルーム”“佐藤ルーム”などCDの名前を冠としたルームから個性を持たせ、それを全面におしだした戦略です。例えばBtoBが得意、コンサル的な仕掛けのクリエイティブが得意など、ルームごとに個性があるので、それらの特性を冠としたルームにしつらえ直すことで11の個性的なルームを用意することができました。市場からは好反応です。クライアントから直接、モールに依頼が入るケースも増えています。

というのも、近年はクライアントが分離発注をすることが増えていて、話題性や仕掛け作りなど、各領域で専門性を持った小集団へのニーズが高まっています。例えば、マスメディアへの出稿を考えていないクライアントは、従来のメディア戦略の代わりに、広義のデジタル活用から具体策としてのSNS活用、あるいはソリューションの仕掛け作りなどを求めます。そういったお客様からは総合広告会社のADKではなく、クリエイティブ・ワン、あるいは特化したスキルを持つブティックと一緒にやりたいというご相談が多いですね。

個性が明確になり、専門性がはっきりすると、“どこに依頼すべきか?”が明確になるのでしょう。昔は「カリスマクリエイターに依頼したい」という志向がありましたが、今は企業としても解決したい領域が明確になっているので、そこにフォーカスしノウハウを提示することが重要です。ブティックにしてもモールにしても、それぞれの専門領域で経験を重ねていけば、当然、知見も蓄積されていくので、ますます専門性が高まるというメリットもあります。

また、全社的に「ワンストップ」志向を浸透させてきました。広告会社の仕事はある程度の大きさになると、分業化が進みバトンリレー形式になりがちです。しかしそれだと“戦略や企画の段階ではよかったが、完成したクリエイティブが思ったほど良くない”ということが起こり得ました。ですが、広告市場が成熟した今、クリエイティブの完成度への妥協は許されない。だからこそ弊社ではバトンリレー形式ではなく、プランナーとプロデューサーが一体となって、最初から最後まで対応する体制を敷いています。すると、企画アイデアばかりに目が行きがちだったプランナーも全体の利益を考慮に入れるようになります。その結果、アウトプットのクオリティを保ちながら利益も作り、そしてきちんと成果も出せるようになるわけです。業界全体が苦境に立たされていると言われている中、弊社の利益率が伸びているのは、このワンストップ志向の効用と考えています。

森永賢治

既存の型に人をハメても
新しい発想は生まれない>>>>>

今後のビジネス展開を
教えてください。

これまではクライアントから依頼されて仕事が始まっていましたが、今後は私たちが主体的にテーマや商材を作り、積極的に提案をしていきたいと思っています。そしてグループ会社であるADKマーケティングソリューションが営業として持ってきてくれる案件だけでなく、私たち自身も営業部隊を強化し、直接クライアントから案件を獲得していきたいと考えています。さらに、プロデューサーにも営業の役割を担ってもらいます。先般、プロデューサーのブティックを作ったのですが、これを“出島”にするイメージです。大きなユニットであるADKには頼めない仕事を、ADKのリソースに繋がる出島に依頼したいというクライアントを獲得していきます。実際、ブティックの依頼主には競合の広告会社もいます。

今はクライアントも専門性を求めているので、専門的なソリューションを提示できる営業担当が必要です。例えば店頭キャンペーンについて豊富な知見を持つ担当者がクライアントと対峙すれば、あっという間に話が決まります。クリエイティブ・ワンが目指す営業機能はこのイメージに近い。総合代理店に丸投げしないという分離発注のトレンドはADKとして機会損失になりますが、そこはクリエイティブ・ワンできちんと巻き取っていければと考えています。

また、弊社のビジネスソースをプラットフォーム化していく構想も進んでいます。競合の広告会社、とくに弊社より規模の小さな広告会社からの受注が目標でしたが、実績が増えてきました。自社で優秀なクリエイティブやディレクターを抱え込むのは難しい会社が、ADKにクリエイティブを依頼するのは難しくても、ADKが持っているブティックに依頼するのはOKという風潮ができつつあります。ここはさらに強化したいです。

ユニークな組織作りが
進んでいますが、
今後の体制に関する
構想を
教えてください。

森永賢治

私が組織の型を決め打ちで作ることはありません。出来上がった型に人をハメたところで、何ら新しい発想は生まれないと思っています。プロフェッショナル採用も社員を採用するというより、新しいビジネスパートナーを得る感覚です。私たちはどんどん変わらなければならないので、新しい刺激を持ってきてくれると良いですね。例えば、昨年、長らくパチンコ業界で活躍してきた方が入社されましたが、その方をきっかけにパチンコ業界を攻めようという話になりました。専門性のある方が入社されると、“なにか新しいことができそうだな”とワクワクします。

ブティックについても同様です。経営陣がトップダウン的に作るものではなく、大切なのは“自分たちの会社としてやるぞ”という本人たちのモチベーションです。なのでブティックを作るのは、強い思いがあるメンバーです。もちろん社内規定はありますが、基本的には自主性を重んじます。

自主的に動き、かつ変化していく組織を目指す背景には、デジタルシフトがあります。現在、リアル案件が減る一方でデジタル案件が伸びています。プロフェッショナル採用では、入社されてくる方が、デジタルソリューションの強化にどのような力を発揮してくれるのか照らし合わせ、弊社のデジタルソリューション戦略に合致した方に入社いただきたいと考えています。また、すべてを取り仕切れるプロデューサーを育てたいので、自主的に動けるプロデュース人材も大歓迎です。

私自身がキャリアの中で、調査やプロモーション、メディアやストプラなど様々な業務を経験して感じたことですが、例えばメディアやマーケを理解したうえでキャンペーン・プランニングすると企画のクオリティや成果が違ってきます。いろいろな人が集まって考える、あるいは多様な経験を重ねてきた能力ある人間が自主的に動けば、世の中の変化に対応しながら大きな価値を生み出せると思います。

森永賢治

情熱やこだわりを持つ人材が
力を発揮する組織>>>>>

ご自身の“才能”は
何だと思いますか。

いろんな部署で働き、様々な経験をしてきたので、俯瞰で見る力が備わったと思います。ただ、組織は俯瞰で見ても、一人ひとりの行動を細かく管理するタイプではありません。本人のやる気が一番大切だと思うので、基本的には任せてしまいます。最低限の管理はしますが、限りなく自由にやってもらう。私自身、水滸伝にも登場する「梁山泊」という故事が好きで、いろいろな人が自分の得意分野を持って集まってくることにワクワクするんです。餅は餅屋に任せて、一緒にやってスパークできたらいいなと。物事を力強く動かすのは、やはり本人の意思しかありません。だから限りなく自由に動いてもらう、それを許容する力も私たち管理者には大事だと考えています。

どのような人材に
入社して欲しいですか。

森永賢治

色々なタイプの方に来てもらいたい気持ちはありますが、弊社と柔軟に合わせながら力を発揮できる人材を求めています。まず、私たちはプロフェッショナル集団です。可動域は広いほど良いですが、自分の専門に関しては“自分が一番だ”と思っていて欲しい。そんな人たちがたくさん集まって、生み出すクリエイティブやアクティベーションはとても素敵ですから。そしてプロである以上は、お金を管理して利益も生んで、その中で良いものを作る意識を持っていて欲しいですね。あと、自分の美学を大事にしつつも、弊社の進みたい方向に進んでみようという人。私たちマネジメントは、その人材を活かすというより、その方の馬力を会社のやりたい方向に導こうと考えますから、絶対にこう、と決めきってしまう人は合わないかもしれません。

最後に、“オタク性”とも言えますが、情熱やこだわりを持っている人が力を発揮する組織なので、できれば自分の中で、「これは人に負けない」「これは得意、好きだ」というものがある人が良いですね。ただし、それがひとつだと近視眼的になる可能性があるので、ふたつ以上。薄く広く評論家的に生きてきた人には、クリエイティブ・ワンの空気は合わないかもしれません。自分がプライドを持ってやってきたことで、既存のメンバーに強烈な刺激を与えて欲しいと思います。

森永賢治