Executive Interview ADKグループ各社 社長インタビュー

NO.03

アニメーション人材と
ビジネス人材のシナジーが
コンテンツを進化させる。

野田孝寛
野田孝寛
Name.
野田孝寛
Position.
ADKエモーションズ 
代表取締役社長

1985年株式会社旭通信社(現・株式会社アサツーディ・ケイ)に新卒で入社。営業部門にて複数の大手クライアントを担当した後、2018年に事業統括・執行役員コンテンツ事業セクターに就任。2019年より現職。

「Animation’s NEXT」
という旗印の下で
進めてきた改革 >>>>>>>

分社化から2年経ちましたが、
どのような変化が
ありましたか。

野田孝寛

弊社は、アニメコンテンツの企画制作、二次利用の販売促進、クライアントとのコラボレーション事業を展開する企業です。エリアでは国内市場が半分、アメリカや中国を含めた海外市場が半分という構成です。テレビアニメを制作して放送することを得意としてきましたが、ここ1~2年の間に、その出口が多様化しました。NetflixやAmazonなどの動画配信プレイヤーが登場し、お客様がテレビ以外でもアニメコンテンツに触れられる環境になったのは大きな変化でした。

弊社の強みは、コンテンツ関連の事業者でありながら、広告会社グループの中の事業体である点です。広告会社の中にあるアニメコンテンツ事業だからこそ、様々なクライアントとのコラボレーションが実現しやすい。実際、ADKマーケティング・ソリューションズと相談をしながら販路を確保し、商流の変化に臨機応変に対応しながらチャンスを広げてきました。分社後もお互いプロフェッショナルとして連携しています。

同時に、この2年で強固な組織作りも進めてきました。私がコンテンツ事業を任される前は、比較的アニメに特化した知見を持っている方が多数派でした。しかし、この1年間は、広告会社でブランディングやデジタルプロモーションの経験がある人たちを意識して採用。今はその両者の間でコラボレーションが始まりつつあります。

デジタル系人材や広告会社でのブランディング経験者など、新しい血が入ってくることで、組織の中で“そういったモノの見方があるのか”“そういったファンの作り方があるのか”といった化学反応が起こります。その一方で従来から弊社に所属し、アニメに精通したスタッフから彼らに“アニメコンテンツの深さ”“どれだけ多くのファンがいるか”を伝えることでも化学反応が起きて、次の打ち手に繋がっています。

私たちは「Animation’s NEXT」という旗印を掲げています。アニメ事業はグループの中でも非常に歴史があるので、先駆者としてのDNAは守りつつも、デジタルテクノロジーを活用することで、新たなアニメ事業の道筋を探していこうとしています。それはアニメ業界にいる他の事業者にも必ずプラスになると確信しています。漠然と旗印を掲げましたが、具体的にたくさんの方に参画いただき、様々なディスカッションやコラボレーションが始まり、ひとつずつ形になってきています。デジタル化が進展していけば、できることも増えるでしょうし、メタバースやNFTにも、私たちの勝機があるかもしれません。そういう点も含めて、パートナー企業と相談している段階です。

野田孝寛

日本のアニメコンテンツの
ポテンシャルは
こんなものではない>>>>>

今後のビジネス展開を
教えてください。

野田孝寛

今、ADKグループ全体でデジタル領域の機能拡充が進んでいますが、私たちも“IPビジネスのデジタル化をどのように捉えていくか”を考えています。それは“IPビジネスとデジタルの接点をどのように作っていくか?”とも言い換えられます。お客様のデータを様々な形で収集して、まずは“どのようなお客様にこのIPをご支持いただけているのか”、あるいは“ご支持いただけていないのか”の見える化を進めています。

すると、お客様にどのような体験を提供すれば良いか、作戦を立てることができますし、豊かな顧客体験を提供することで、より一層そのIPに対するファンになっていただけます。さらにそのIPタイトルの価値も向上していきますし、IP関連のビジネス自体も広がっていく。私たちが様々なパートナーと協同で事業を行うのは、それが広告会社のコンテンツ事業の責務だと考えているからです。

また、今は国内と海外の収益が五分五分の状況ですが、今後は海外からの収益が増えてくると考えています。一番大きなマーケットの北米は人材を充実させようと思っていますし、中国という大きなマーケットに対しても、日本のアニメコンテンツ特有のプロパティをどうすれば広げていけるのか、定着できるか、そしてもっと熱いファンを作るにはどうすればいいのかを考えています。

他には、今までとは違うパートナーとコンテンツを一緒に作る計画も進んでいます。
今までは人気コミックをベースにすることが、アニメコンテンツ王道の成功パターンでした。しかし、それだけではなく、ゲームをベースにしながら、最初からアニメとゲームの連動を考えたり、リアルな接点の作り方を考えたりすることも含めて、面での展開を準備しています。

もちろん、私たちが長年ご一緒してきたタイトルについても、新たなラインを作っていきながらバリューアップを図っていきます。例えば私たちの大きな強みとして、クレヨンしんちゃんやドラえもん、仮面ライダーなどロングセラーのビッグタイトルがありますが、仮面ライダーが50周年を迎えるにあたり、派生タイトルに一緒に取り組んでいくことが決まっています。ひとつは著名な映画監督や豪華キャストの皆さんと作る特別な映像作品。そして、今までになかったアニメの仮面ライダーも登場。ファンの方々には期待を持って受け止めてもらえると思います。さらに2023年公開の庵野監督による映画「シン・仮面ライダー」も進んでいます。

このように、いろんなことを進めていますが、それでもまだビジョンは三合目、四合目の段階です。日本のアニメコンテンツのポテンシャルは、こんなものではありません。私たちの努力不足もあり、ファンのみなさんに魅力がまだ十分に伝わっていない部分があるので、そこを埋めていきたいです。

野田孝寛

失敗は大いに結構。経営陣を
ドキドキさせて欲しい>>>>>

ご自身の“才能”は
何だと思いますか。

才能かは分かりませんが、自分のキャリアにおいて、“こうありたい”と考えていることはあります。スタンフォード大学のクランボルツ教授が書かれた「計画的偶発性理論」を自分のことを振り返りながら読むと、納得する点がたくさんあります。その内容は、キャリアの8割は偶然で決まるというものですが、ポジティブな偶然を必然的に自分のキャリアの中に引き込むためには、5つの行動特性が重要と書かれています。

まずは「好奇心」。様々なことに興味を持ち、自分自身で物事を調べる。そして実際に人に会ったり試してみたり、事業に組み込んでみるという「冒険心」も必要です。すぐに結果が出ることは少ないので、「継続性」が必要です。継続性を持ちつづけると、自分が思っていることとは違う結果が出ることもあります。その場合は「柔軟性」を持ってその結果を受け止めます。そして最後は「楽観性」です。結局“なんとかなる”と思っていれば、なんとかうまくいくものです。自分自身がこれらの5つを大事に思い、いろいろな偶然が重なって、今の仕事をしているという自覚があるので、教授のおっしゃることは当たっているなと思います。

その時々の状態を楽しもうと
心がけてきたということ
でしょうか。

野田孝寛

与えられたことも含めて、受け入れることが大事だと思ってきました。そうすると、自分がイメージしていたこととは違う面白さが見つかります。人は自分でやってみて、うまくいくこともうまくいかないことも含めて、経験をしなければ理解できません。特に若い人たちは躊躇せずに試してみるべきでしょう。私はそういう若い人たちをできるかぎり応援したいと考えています。

中には、それをプレッシャーに感じる方もいるかもしれません。しかし、私は「失敗してください」という姿勢です。チャレンジするからこその失敗なので、失敗は大いに結構。後始末は私がするので、ドキドキさせてほしいですね。みなさんが思う場所で、思う形で、力を発揮していただくと、組織としての熱量もエネルギーも上がっていきます。今、会社は転換期にあって、進もうとしている方向は決まっていますが、ひとつひとつの具体的な進化、中身はこれからです。それは経営陣だけが考えることではなく、現場のみなさんの創意工夫やチャレンジで形成されていくものなので、個人の挑戦を組織ぐるみで後押しするのが大事だと思っています。もともとADKには大きなベンチャー企業のようなスピリッツがずっとありましたが、とくに今の局面ではそのマインドセットが非常に大事だなと感じています。

野田孝寛

どのような人材に入社して
欲しいですか。
また、
どのような人が活躍しやすい
社風でしょうか。

「日本人の同調圧力」という言葉がありますが、同調圧力に屈しない人がいいですね。そんな方は自信があったり、思いが強い人だと思うので、ぜひご一緒したいです。正直、個性的な人をマネジメントするのは、十分コミュニケーションをとり、お互いを理解し合うプロセスも必要になりますが、同調圧力に流される人ばかりだと何も新しいことが生まれないので、大歓迎です。

社風については、なるべく笑いがある組織だといいなと思っています。そのためには一見、無駄に思えるコミュニケーションもたくさん必要です。私は組織には心理的安全性が必要だと思っているので、生意気なことや、人と違う意見を言っても許される風土は大事にしたいですし、社員にもそう認識してもらって、のびのびと働いて欲しいです。

また、外から見ると、私たちの会社はとてもフラットだと思います。上司を役職で呼ぶこともないし、言いたいことはストレートに伝える社風です。伝えたことをネガティブに捉えられることもほぼありません。そういった環境を心地よく感じる方に、私たちの会社は合うのではないでしょうか。

アニメを扱っているから
といって、
必ずしも
“コンテンツ愛”が必須ではない
ということでしょうか。

そうですね。むしろ色々な個性が重なり合っている方が良い。私はビジネスサイドから入ってきた人間なので、もちろんコンテンツも好きですが、本当のファンからすると“まだまだ浅いな”というレベルだろうという自覚があります。だからコンテンツを深く理解している作り手やプロデューサーがいなければ、コンテンツビジネスそのものを進めることができません。その一方で、そういった方々の力をどれだけ広げられるか?という意味でも、ビジネスサイドの存在は必要です。とにかく異なる個性の組み合わせや掛け算が前提になります。

アニメの制作現場に近いほど、優先順位はクオリティ>スケジュール>バジェットになります。あくまでもハイクオリティのものをこだわり抜いて作りたいという思いは、作り手として当然です。しかし、ビジネスの側面で考えたときには、それではどうしても立ち行かなくなってしまいます。ビジネスサイドのプロデューサーは優先順位が違って、バジェット>スケジュール>クオリティです。役割の違う両者が、時にはケンカをしながら落としどころを探っていくプロセス自体が、とても重要なんです。ですから、現時点でアニメやコンテンツに関わっていない人にももちろんチャンスはあります。違う視点を持つ方が増えるほど、見える範囲が広がっていくので、ぜひそのような方とご一緒したいですね。