従来の総合広告会社の殻を破るため、新たなチャレンジが続くADKグループ。
情熱と知見を併せ持つ新たなひとりの人材がジョインすることで生まれる“波”がある。
ADKという場を存分に活用しながら、新たなIPビジネスの可能性を切り拓く田中局長の動きと熱意を追う。
2025年に開催される大阪・関西万博のライセンス事業の前哨戦として、1年間限定のマーチャンダイジング事業の公募に参戦し獲得。2021年9月から関西を中心に大阪・関西万博のポップアップのショップを展開。そこに並ぶ商品の企画から販売、プロモーションを一貫して手がけている。ADK初のマーチャンダイジング事業にチャレンジしている。
前職でも、ライセンスビジネスに
携わっていたと伺いました。
ライセンスビジネスの魅力は
何でしょう。
個人的に無形物を形にして、事業化していくのが好きなんです。お客様が喜んでもともと形のないコンテンツのグッズを手にする。その姿を見るのも、それまでの一連の流れを考えるのも楽しいです。コンテンツビジネスは、コンテンツの権利を獲得し、それをどこで活用するか考え、Eコマースを整備し、ファンを獲得し、囲い込むという、色々な作業をつなげた最後に「購入してもらう」フェーズに到達できます。案外この流れを組み立てられる人材は少ないらしく、私の場合は、25年間の経験で蓄積したこの権利やモノに関する知識と経験で、ADKに呼んでいただいたようです。
大阪・関西万博プロジェクトに
関わることになったきっかけを
教えてください。
音楽会社の後に入社した大手ライセンス会社で2002FIFAワールドカップ関連のマーチャンダイジングを経験して、初めて国民的なイベントに携わる醍醐味を知りました。そもそも音楽会社に入ったばかりの23歳の時、Jリーグ開幕のタイミングで、チームのフラッグが何万本と売れるのを近くで見たのが権利関係のビジネスに関心をもった大きなきっかけでした。だからいつか東京オリンピックや万博に携わってみたいという気持ちが自分の中にありました。
そんな私に、ADKに入社した直後、突然関西支社から「万博のロゴが決まったので、ちょっと相談に乗ってくれませんか?」と連絡が入りました。どうも万博ロゴの発表イベントをADKが仕切っていたら、その流れでクライアントから、「ロゴについて質問したい。ADKでIP(知的財産)に強い人と話したい。」と言われたらしく、”ライセンスに強い田中”という人間が入社したな、と思い出してくれた方がいて相談が来たようでした。私としては、これはチャンスだ!と。絶対、万博でマーチャンダイジングをやりたい!と興奮していました。ADKに入社して、まさか万博に関われるとは考えていなかったので、まさに嬉しい“ご縁”でした。
関西支社からのロゴの相談に応じつつ、大阪・関西万博のマーチャンダイジング事業に食い込むための準備も進めました。ADKマーケティングソリューションズ内に「博覧会準備室」という組織があると聞きつけて、「事業をやりたいんです!」と相談に行きました。最初は、“そんな人がいるんだ?”と驚かれましたね。その後、彼らと日本国際博覧会協会に乗り込んで「大阪・関西万博でマーチャンダイニングとマスターライセンスをやらせていただきたいんです!」と手を挙げたところ、最初は“何を言ってるのかわからない”という反応でした。
最初に協会へ伺って半年ほど経った20年3月ごろ、大阪・関西万博における「1年限定のマーチャンダイジング事業」の公募がスタートすることとなり、ADKとして応札しました。オールADKで試行錯誤しましたが、無事に1位で審査を通過し事業化する運びに。現在、関西圏を中心にポップアップショップを展開し、商品企画から販売、プロモーションをワンストップで手がけています。ADKとしてはこれまでにない事業領域ですね。スタートは順調に切れましたが、本丸はこれからなので、まだ“入口に立っただけ”と思っています。
ADKにとって、新しい
チャレンジとの
ことですが、
うまくいく確信はありましたか。
勢いですね、というのは半分冗談ですが(笑)。この仕事は看板がないと取れない案件だと思いますが、ADKにはそれだけのブランド力があります。だから、安心して手を挙げることができました。とはいえ、キャリア入社の身で会社に前例のない仕事を進めていくことは大きな困難や壁が付きまとうとためらう人もいるかもしれません。でも私は、この会社をうまく使えば“自分ならできる”と踏んでいました。その根拠は、もちろん自分の性格もありますし、前職で育んだ経験や考え方もありますね。元々、慎重派ですが、コンテンツビジネスやIPビジネスには正解がないと思っているので、“まずやってみようよ”というスタンスです。
それにADK社内を見渡しても、しっかり説得すれば、ついてきてくれる人材がいると感じたし、人を大切にする会社なので、必ず人事部門が、最適な人材を送り込んでくれると信じていました。なので挑戦しました。
その熱心さも
うまくいく秘訣ですか。
コンテンツやIP事業には正解がないんです。芸能やキャラクター商売って、生活に必要なモノを売っているわけじゃない。売っているのはいわば“付加価値”なので、その付加価値を手にしたときの満足感やコストパフォーマンス、所有欲などといった数値化できない要素が事業の核になります。
このような正解がない分野で、どう事業を進めて行けばいいのか。長い経験の中で私が実感値として持っている“正解”は、その事業に携わったメンバーの満足感だと思っています。ひとりでやるわけではなくチームで行う事業なので、ひとりひとりの役割の中で、彼らが満足して仕事をしていることが大事なんです。そうすると事業もうまくいくんですよね。だからこそリーダーが一番、熱をもって事業を行わないとチームが崩れてしまうと思っています。
さらにリーダーとして重要視しているのは、この仕事の楽しさを知ってもらうことです。楽しくないとメンバーはついてこない。叱るのが先だとついてきません。なので、初めて携わるメンバーはまず売場や現場に連れて行く。そのコンテンツを求めて何千人ものお客さんが並んでいる光景を見るとワクワクするじゃないですか。業務としてのルールやマニュアルから入ってもお客さんの熱は伝わらないし、難しいことや厳しいことは後からでいい。まずは“お客さんが喜んでいる”出口の景色を見せて、楽しさから伝えるのが私のやり方です。
事業は決してひとりでできるものではありません。だからこそ、稚拙な言い方ですが、リーダーは心から楽しいと思える夢を語らなければいけない。そのほうが5時間教育するよりも早いですね(笑)。
田中さんがADKで
得たものはありましたか。
広告会社という業態に初めて入ったので、まず文化の違いを楽しんでいます。知らない言葉の国へ、ぽつんとひとり踏み入ったような感覚ですが、私は好きです。いくつになっても知らない世界に足を踏み入れるのは、大変刺激的だなと。なにもないところから少しずつ仲間を増やして、新しい事業、あるいは新しい事業を作るための基盤を構築していく感覚も楽しいですね。
入ってみると、ADKグループにはいろんな人材がいました。想像以上に目を引くような人材もたくさんいて、仲間作りも楽しい。今回の仕事を通じて、ADKグループが持つクリエイティブ力はさすがだなと思う機会も多くあって、それがADKの武器であり、財産だとも感じています。この素晴らしい力をどうクライアントに提供するか、IPと結びつけて活かすか、それがこの会社の未来を築く可能性だと思います。
私の普段の仕事は“クリエイティブをIPとどう結びつけるか”を考える役割ですが、万博関連の仕事では、普段のポジションを超えた新しいメンバーと知り合うことができて、知らない領域や新鮮な考えに触れる機会もたくさんあります。そこに自分の知見や得意なことを付加することで新しい価値が次々と生まれていく。どこまでも自分の中でのブルーオーシャンに漕ぎ出せる感覚が楽しいです。きっとこれは総合広告会社・ADKならではの体験ですし、私と相手、お互いの刺激になって、新たなクリエイティブも生まれている実感があります。
今後の目標をお聞かせください。
入社して初めてアニメIPにおけるADK EMのポジションを理解しました。ADKグループならたくさんのアニメコンテンツの価値をもっと拡大していけると思います。今のADK EM は自ら事業ができる領域や権利をあまり保有してはいませんが、それを推進するチームを強化していけば大きく変わるのではないでしょうか。またIPを開発したり、大きな権利を勝ち取るなど、10年かかってもいいので総合IPマーケティング会社を目指したいです。
新卒で大手エンターテイメントグループのライセンス事業会社に入社。その後大手ライセンス会社、大手音楽エンターテイメント企業に所属。キャラクター、スポーツイベント、芸能など多くのジャンルに渡り約27年間コンテンツビジネスに従事。2018年にADK入社、2019年ADKエモーションズ(以下、ADK EM)ビジネス開発局長に就任。局長としてADKが管理するIPビジネスの統括を行う一方で、大阪・関西万博の案件を獲得。ADKグループに新しい風をもたらしている。